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武装勢力の資金源になっていることも!知ってほしい紛争鉱物のこと!

紛争鉱物は戦争や内戦、反乱などの紛争地域で採掘される鉱物資源のことです。
「血のダイヤモンド」と呼ばれることもあり、これらの鉱物が武装勢力の資金源となっている場合があり、情勢の不安定さを後押しする物となっています。

主な紛争鉱物

紛争鉱物と呼ばれる鉱物は主に以下の鉱物です。

  • タングステン
  • タンタル
  • ルビジウム
  • ウラン
  • コバルト
  • グラファイト
  • ルチル
  • ルテニウム
  • パラジウム

これらの鉱物は携帯電話やコンピュータなどの電子機器、軍事技術、医療機器などの材料に使用されており、世界中の企業にとって必要不可欠なものとなっています。

例えば、タングステンは硬度・密度が高く耐摩耗性も高いことから、工具の材料や電気炉や高温熱処理炉、電子部品の材料に使用されます。
またタングステンは鉄砲の弾にも使われます。そういえばゲームでも武器の材料として「タングステン」という名前を見たことがあります。
あとはX線管やCTスキャナーの材料にもなっていますね。

タンタルはあまり聞き慣れない鉱物ですが、優れた導電性からコンデンサーの材料に使われています。
また、ゴルフクラブのヘッド部分や自転車のフレームにも使われているようです。

コバルトは非常に多くの工業的用途があり、有名なのはバッテリーです。
スマホやノートパソコン、電気自動車などで使用されるリチウムイオン電池の正極の材料として使われます。
また、強力な磁性を持つことから、磁気材料の主成分としても使われています。

このように私たちの生活の身近な原料が『紛争鉱物』となっているんです。

紛争鉱物の何が問題なのか

紛争鉱物は、紛争地域で採掘されている状況から、その採掘や貿易が武装勢力の資金源となっているなど、様々な問題を引き起こしています。
主な問題点は以下の通りです。

  1. 人権侵害
    紛争地域での鉱物資源の採掘は、しばしば人権侵害の温床となっています。紛争勢力による労働強制や子どもの労働、人身売買などが報告されています。
    後述しますが、SDGsの動きにより、トレーサビリティが重要視され、このような鉱物の採掘過程において不当な労働で採掘された資源ではないことの証明を求められる機会も増えています。
  2. 環境破壊
    鉱物資源の採掘は、しばしば環境破壊につながっています。
    鉱山の建設や採掘によって、森林の伐採や地下水の枯渇、土壌汚染などが発生し、地域の生態系や健康に深刻な影響を与えることがあります。
  3. 武装勢力の支援
    紛争勢力は紛争地域での鉱物資源の採掘や貿易を通じて、自己の資金源を確保しています。
    これによって紛争勢力は武器の購入や軍事行動などに資金を提供することができ、地域の不安定化を引き起こすことがあります。
  4. 企業の社会的責任
    鉱物資源を取引する企業は、社会的責任を持つことが求められます。
    企業は、自社が取引する鉱物資源の起源を明確にし、紛争地域からの鉱物資源の調達を避けることで、武装勢力の資金源にならないようにすることが重要です。

これらの問題に対処するため、国際社会は紛争鉱物の取引に関する規制や認証制度を導入しています。

紛争鉱物をめぐる規制

ドッド・フランク法(アメリカ、2010年)

ドッド・フランク法は2010年にアメリカ合衆国で成立した金融改革法案です。
正式名称は「ウォール街改革・消費者保護法」
(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)といいます。

この法案は2008年に発生した金融危機を教訓に、金融規制の強化と消費者保護の強化を目的として制定されました。
具体的には金融機関の監督体制の強化、金融商品の規制、投資家保護の強化、不良資産処理の枠組みの整備などが含まれています。

また、ドッド・フランク法には、紛争鉱物に関する規制が盛り込まれています。
米国内の企業が紛争鉱物(コルタン、タングステン、タンタル、金)を使用する場合、原材料の起源を明確にし、紛争地域からの鉱物資源の調達を避けることが求められています。
また、企業は自社が使用する鉱物資源の原産地に関する調査結果を公表することが求められています。

これにより、企業が紛争地域からの鉱物資源を調達することを抑制し、紛争地域での紛争を悪化させる資金源となることを防止することが狙いとされています。

紛争鉱物規則(EU、2018年)

欧州連合(EU)においても紛争鉱物規制として、EU Conflict Minerals Regulation(EU規制)が定められています。
この規制は、2017年に欧州議会と欧州理事会によって採択され、2018年から施行されています。

EU規制は、ドッド・フランク法に似たものであり、紛争鉱物(タングステン、タンタル、金、コバルト)の調達に関する企業の義務を定めています。
具体的には、EU規制は以下のような内容を含んでいます。

  • 調達のトレーサビリティの確保
    企業は、調達した鉱物がどこから来たのか、どのようなサプライチェーンを通過したのか、調達に関連するリスクや問題はないかを明確にする必要があります。
  • 調達に関する情報の開示
    企業は、紛争鉱物の調達に関する情報を公表することが求められます。
  • サードパーティの監査
    企業は、調達先での労働権や人権の侵害がないことを確認するために、独立した第三者機関による監査を実施する必要があります。

EU規制は、欧州連合内の企業に対して適用されますが、それ以外の国の企業もEU規制に準拠する必要がある場合があります。
EUに販売する製品については、EU規制が適用されるためです。
EU規制は、紛争鉱物の調達に関する透明性を高め、紛争地域における人権侵害の防止に役立っています。

責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン(日本、2022年)

では、日本はどうなっているかというと、2022年に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定されました。
ガイドラインであって、法律や規制までは至っていません。

日本政府は「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しました(経済産業省 > ニュースリリース)